4章を終えて...あとがき

◆4章終了までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
   
 4章は内容的にとてもハードなところが多かった部分です。
 罪とは、償いとは、人間とは、死とは......岬や克也たちが悩みまくりましたが、私自身も書きながら様々なことを考え、思いました。そして考えれば考えるほど、この問題の難しさに直面しました。
   
 今も世界では血で血を洗う争いが繰り返されています。それぞれの正義のぶつかり合い。難しいですね、本当に難しい。もしかすると、絶対的な答えはないのかもしれません。
   
 自分に『人を殺した罪』があることに、岬はこの章で初めて、本当の意味で気づきました。
 以前、『2章で御嵩に操られ、人を殺してしまったことに対し、岬の罪の意識が薄いのでは』というご指摘をいただいたことがあります。
 確かにそうだったのです。岬はあの時操られていたこともありますが、憎い巽志朗の属する竜一族だから、という理由で『悪くない』とまでは思いませんが、『仕方がない』みたいな思いもあるのです。
 けれど、その後、憎んでいた竜一族の長が克也であるということを知り、葛藤しながら、自分が『加害者』でもあったことを知るのです。
 そのことについては、『罪の重さ(2)』更新後の更新日記で書いていますので、これ以上はここでは割愛しますが......。
   
 ただ――、人を殺しておいて反省のかけらもない狂った人は別ですが、その罪を本当に悔いて苦しむ心を持っている人には、命以外で償う方法もあってもいいのではないかと思います。(まあ、その殺しの動機ややり口にもよりますが)
 罪を忘れず、罪を背負いながら、それでも精一杯その時その時の自分にできることをして、精一杯生ききることが罪に対する誠意の姿勢なのかもしれないと思ったりもします。
   
 私の好きなアーティストTHE ALFEEの『Pride』という曲の中にこんなフレーズがあります。
   
 『全ての罪が許されることはないだろう だから今を生きるその誇りを胸に掲げ 迷わず 信じた道を真っ直ぐに 君よ闘え』(『Pride』/THE ALFEE)
   
 この歌全体としてはちょっと違うのですが、この歌詞の部分だけは、まさに今の岬たちのイメージです。
   
 ただ、やはりこれはあくまで岬側の意見であり......。(どうしても話の展開上、作者としては主人公寄りになってしまうのです。そうじゃないと話が終わっちゃいますからねえ。苦笑)
 逆の立場の人たちのことを考えると、「果たしてそれでいいのか」という思いもあります。
 だって死んだ人は生きたかったのにそれを無理やり断たれた」わけですから、その生きたかった思いを無理やり絶った張本人が生きているということ自体理不尽なことですよね。
   
 難しいです、本当に。
   
 だからこそ、帰結するところは『人は人を殺してはいけない』ということなのではないかなと思います。
 人を殺したことの岬の苦しみ。それこそ人を殺したことのない私には想像の域を出ないことですが、精一杯岬の苦しむ姿を描いたつもりです。その岬の思いを受け止め、『命』について少しでも読者の方に考えていただければ作者冥利に尽きるよなあと思ったりするわけです。
   
 そしてもう一人。この章で私にとって印象深いのは、中條喜一。
 一族の術力がないことにずっと劣等感を抱きながら生きてきた男です。
 でも、本編中でも克也が語ったように、彼は術力がないからこそ、人をわざと傷つけることも殺すことも強要されることなく生きてこられた、本当は幸せな人だったのです。
 奈津河も竜も、闘うこと、つまり人を傷つけること殺すことが日常茶飯事です。どちらの一族もすでに歪みを抱えています。その中で能力が高ければ一族のために闘うことを強要されてしまうのです。
 けれど喜一は違った。その幸せに気づくことができなかったのは、父親である博のせいでもあるし、そのほかの家族のせい、一族のせいでもある。けれど自分のせいでもあるんですよね。
 喜一は「どうしようもなかった」と言っていますが、実はまだ道は残されていました。
 博や幸一が、岬の意識をどうにかしようという話を持ちかけたとき、どんなに脅されても断る方法もあったはずです。
 結局、喜一は一族から見放されたとひねくれつつ(笑)も、一族から離れることを選択しなかった。反抗してこなかった。
 その気になれば、奈津河一族からの資金を当てにしない方法を模索することもできたと思うのです。
 でも喜一は一族から離れられなかった、その方法が採れることを考えられなかった。それだけ一族に縛られていたということ。一族から出るチャンスはたくさんあったはずなのにそれをしなかった、その勇気がもてなかった。それは喜一自身のせいでもあるはずです。
 NOと言う勇気を持てなかったことから狂い始めた何か。それはやがて、父親を殺すことにもつながります。
 人を傷つけたり殺したりする必要がない幸せな位置にいたのに、それに気づかず、自らその幸せを終わらせてしまった。
 なんとも皮肉なことだと思います。
 喜一は行方不明となるわけですが、彼がその後どうなったかは、いつか書けたらいいなと思います。
   

 また今回、薬物使用についても取り上げました。
 これは実は、4章を始めた当初にはなかったエピソードでした。(柚沙と岬との出会いももっと違う形でした)
ですが、ふとある時「意識混濁させるって、現代だったら薬でもできそうじゃん。これってどうなのよ?(←まさに幸一的発想。苦笑)」と私自身疑問を持ってしまったことがきっかけで生まれました。
 それが、こんなに重要な場面になるとは思わなかったです(笑)
   
 この場面で痛感したことは、「私って、つくづくアクションシーンを書くのが苦手&下手だな」ということでした。
 アクションシーンって、ラブシーンと並んで、物語の中で目玉シーンですよね。
 手に汗握るようなアクションシーンを巧く書きたいのに、表現力が足りないんですよね(汗)いつもワンパターンになっちゃって(涙)歯がゆかったです。もっともっと巧くなりたいです。精進せねば!
 そのためには、プロアマ、媒体問わず、巧い作家さんの作品をたくさん読んで勉強したいなあと切に思うわけです(汗)
   
 さて、次は5章です。
 3章のあとがきで「5章目に突入!などということにはしません」とか宣言したのに、4章が思いの外長くなってしまい、結局5章へ突入(汗汗)すすすすみません。見通しが甘かった(汗汗汗)
 5章こそ、最終章のはずなので!(『はず』って......言い切るのが怖い弱虫)
   
 5章も、4章とは違った意味でハードな予感がします。
 主に、克也の過去との対峙がメインになるので。克也の過去については小出しに色々出してきましたが、本格的に掘り下げます。克也の過去に非常に関わりの深い一人の女性(!)も登場します(ライバル?)。克也の過去を探りつつ、御嵩との最終決戦に突入します。(やはり内容盛りだくさん。大丈夫かな。汗)
 そして、岬の生活環境が激変します!どんなふうに変わるのかは、このあといくつか『幕間(まくあい)』として4章と5章の間の橋渡しエピソードをいくつか書きますが、その中で明らかになります。
   
 本当にここまで続けられるのは、叱咤激励しつつ応援し続けてくださっている皆様のおかげです。
 完結に向けて5章も頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。


 2013.01.30 海亞

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