あまりの真の真剣さに由愛は一瞬たじろぐ。
「な、何よ、危険って・・・・・・、」
不満そうな表情を隠せない由愛をなだめるように真は念を押す。
「あいつの言うことを信用しちゃいけない。何をされるのか分かったもんじゃない。とにかくあいつは危険なんだ。」
「"何をされる"・・・って・・・・・・?」
由愛の言葉に真は大きくはーーーっ、と息を吐いて頭を抱える。
「あのね、由愛ちゃん。オンナノコっていうのは油断すると何をされるのか分かんないものなの。襲われちゃったらどうするの?だからね、どんな時でも気を抜いちゃいけないのよ」
何故かいきなりオカマ言葉になった真に、先ほどの真剣な瞳と物言いに驚いていた由愛は一気に脱力した。
真にしてみると、今の由愛の怒りを静めようとわざとおちゃらけているのかもしれないが、それが由愛には余計に気に入らない。
「------何かと思えば・・・。一体何考えてるわけ?そんなこと考えてるなんてあんたの頭の方がどうかしてるってば。だいたい、まだあたしはあの人とは一度しか、しかもさっきのちょっとしか会ってないんだよ?」
呆れて言い返す由愛に、真は一瞬何かに納得したような顔をしたが、すぐに続けて言った。
「確かに、今のあいつと由愛ちゃんは今日会ったばかり。でもね。・・・・・・前世では会っているんだ。だから全くの初対面とは違うんだよ」
「そんな・・・イキナリそんなこと言われたって・・・・・・。変な先入観とか持ちたくないよ...」
「とにかく、ダメなものはダメなんだ。由愛ちゃん」
話に何の進展も見られない真の言い分に、由愛は少々キレた。
「あのね。いい加減にしてくれない?確かに、前世であたしとあんたは恋人同士だったかもしれないけど、今は時代が違うの。あたしは前世だけにしばられたくないし、それで自分の行動が制限されるなんてゴメンなの!だから、あんたの指図はもう受けないからヨロシク。」
そう言いおき、ストローでコーラをずずっと全てすするとさっさと立つ。
「じゃぁね」
由愛は憮然とした表情で真に背を向けると、真の反応を見る間もなくその場を後にした。
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「手ごわいですね、彼女は」
怒って店を出ていってしまった由愛の後姿を見送る真の背後から半分笑いをこらえているような声がした。
「悪趣味だな。見ていたのか」
振り返らずとも真にはそれが誰だか分かったようで、後ろを見ずに口の端を笑いの形にゆがめた。
「魂はそのままでも、アルカディアス様とはまた随分違、・・・っと失礼。」
そこまで言いかけて突然の声の主は言葉を止める。言外に皮肉を含ませて。
その声の主------ダークグリーンのタートルネックのセーターを着たやけに色の白い青年は、今まで由愛が座っていた場所------真の正面の椅子に自分のトレーを持って腰を下ろした。肩まである色素の薄い髪がさらりと揺れる。
「このままではあの娘の中にある貴方の力もまだ還してもらえそうもないですね・・・」
それには答えず、真はストローの袋を指でもてあそんだ。