◆ファンタジー要素の少ない1章半ばまでをショートカットするためのダイジェスト版もございます。
 * 1 章『出会い(1)』 - 『衝突(3)』ダイジェスト/  * 1 章『接近(1)』 - 『陰謀と衝撃(2)』ダイジェスト/

接近(2)

その日の放課後、早速各委員会の集まりがあり、圭美と蒼嗣は連れだって実行委員の集合場所に向かっていった。
しかし、『トラブル監視委員会』の集合場所は2-Aで、岬は特に移動もないまま時間をもてあましていた。
「はあ・・・・・・」
教室の窓の手すりによっかかって、思わずため息を漏らさずにいられない。
蒼嗣のことは喧嘩相手ではあるものの、気にせずにはいられないのも事実だ。
「はー。こういうの、もしかすると恋って言うんかなー・・・・・・・・・」
思わずつぶやくと再びため息が出た。

その時。
「どうしたの?」
うつむいた状態の岬の頭の上からいきなり声がふってきた。
ハッ、と顔を上げると、見たこともない男がにこりと笑っている。
蒼嗣ほどではないがかなりの長身で、少々茶髪気味の髪は肩につくかつかないかというくらいに伸ばしており、全体的に顔立ちは整っている。切れ長の目が特に印象的だ。
が、この状態で声をかけてくるなんて怪しすぎる。無視を決めこもうと岬がそっぽを向いたその時、聞き覚えのある声が遠くから響いた。
「あー!尚吾!オマエ、こんなとこで何ナンパしてんだよ。」
振り返ると、晶子の彼である高島重人がこちらにむかって歩いてくるところだった。
どうやらこの怪しげな男と高島は知り合いらしい。
「おい重人。人聞きの悪いこと言うなよ。ナンパじゃないって・・・・・・」
「高島先輩の知り合いですか?この人。」
岬が指差すと、高島は笑いながら答えた。
「そ。同じクラス。」
「このコ、重人の知り合い?」
今度は"尚吾"と呼ばれたその人が高島に聞く。
「そうそう。俺の彼女の晶ちゃんのお友達。岬ちゃんっていうの。」
ニコニコと笑いながら高島が答えた。
「岬?どんな字書くの?」
"尚吾"が岬に向き直った。
「あ、えーと、山に甲乙の甲って書く岬です。・・・・・・ナントカ岬ってよく使う・・・・・・」
いつも岬は自分の字を説明するのには苦労する。説明しづらいのだ。
「あぁ、分かった、そうなんだ・・・・・・。『岬』ね。」
『尚吾』は指で空を『岬』の字になぞった。どうやら分かってくれたようだ。
「俺は、利由 尚吾。利用の『利』に理由の『由』あとは、こういう字」
また空に字を書いた。岬がずばり当てて空に字を書くと、再びにこりと笑う。
それを見て、不思議な雰囲気をまとっている人だな、と岬は思った。人懐こい瞳をしているくせに、どこか人を寄せ付けない気品があるような・・・・・・。


そんなやり取りの間に時間は経っていたらしく、選ばれてきた委員たちで2-Aの教室は一杯になっていた。
「あ、そろそろ始めないとじゃね?」
高島は教室を見回しながら利由に言う。
「あ、ほんとだ。」
視線の先には、委員長が決まるまで今日の会議の指揮を取る、この委員会担当の生徒会役員がこちらを見ているのが見えた。今日、委員長が決まるまでは、総勢20名の生徒会役員が手分けして各委員会に出席し、委員長選出までの会議を進行させるのである。
利由は目の前で手を組み、それを前に一度伸ばして少し伸びをすると岬の方を向いて笑った。
「それじゃ、席に着こうか。さっきはいきなり声かけてびっくりさせてごめんね。」
「はぁ・・・・・・」
岬はあっけにとられてしまう。結局何だったのか・・・・・・。大げさにため息なんぞついていたから、気になって声をかけてくれたのだろか?


「それでは、『トラブル監視委員会』第一回目の会議を始めます。」
全員が席に着いたところで担当の生徒会役員が会議の始まりを告げた。
「まずは委員長の選出から始めたいと思います。委員長という責任ある役割を担ってもらうため、自薦ではなく、他薦式にしたいと思います。異議ありますか?」
異議の声はない。
---というより、何でもいい、というのがみんなの本音だと思われるが。
「異議はないようなので、続けます。---誰か『この人を推薦する』という人はいませんか?」
みんなはお互いに目を見合わせる。友情のためには知り合いを推薦するなどとんでもないことである。自分の友人に、委員長などというさらに面倒な役柄を押し付ければ友情にヒビが入ってしまう。かといって、知らない者を推薦するわけにはいかない。


その時、高島が口を開いた。
「こいつがいいと思います。」
一斉に、高島と『こいつ』と指差した相手に注目が集まる。
指差されたのはさきほど岬に声をかけてきた利由であった。
「おいおい重人。そりゃひどいよ。」
利由は苦笑する。
「だって、オマエ意外とそういうの得意だろ?人をまとめたりとか。いつもやってるじゃん。」
「・・・・・・係とか学級委員とかとはワケが違うよ、重人」
「何を謙遜してるんだか・・・・・・!」
高島は利由の肩をばしばしたたいた。
「重人、オマエだってバスケ部のキャプテンだろ?そういうの、得意じゃないのか?」
今度は利由がそう言い返した。

「---どうするんですか?」
二人のふざけたやりとりに少々嫌そうな顔をしながら生徒会役員がきいた。
高島がにやりと笑って"3-Bの利由くんを推薦します!"と言うと、利由もすかさず"同じく3-Bの高島くんを推薦します"と返した。


――結局。
二人以外の推薦が出なかったため、この二人について挙手による投票が行われたが、1票差で利由が委員長をやることになった。
岬は投票のときに他の人の反応を見て知ったのだが、どうも利由も高島と共に3年の中では目立つ存在で人望もなかなか厚いらしい。昔から、係とか学級委員長とかを何度も任せられていたらしい。
まぁ確かに利由も整った顔立ちをしており、高島とのやりとりを見ていても人当たりもよさそうだし、人気の出そうなタイプではある。高島はスポーツマンタイプだが、利由は文科系タイプである。

この日は軽く学園祭で自分たちのするべきことを確認することだけで会議は終わった。
学園祭当日は、交代で学園内の見回りをしなければならないということで、今からげんなりする岬だった。

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