◆ファンタジー要素の少ない1章半ばまでをショートカットするためのダイジェスト版もございます。
 * 1 章『出会い(1)』 - 『衝突(3)』ダイジェスト/  * 1 章『接近(1)』 - 『陰謀と衝撃(2)』ダイジェスト/

出会い(2)

たいくつな始業式が終わるとホームルームだ。
それは毎学期同じことの繰り返しだ。
・・・・・・しかし、今日はいつものホームルームではない。
始業式には現れなかったが、例の転校生が2-Aに来ることは担任のMs.石倉に確認済みだ。
特に女子のざわめきは殊の外すごい。
みんな待ちに待っているのだった。

岬も、他の子たちとは違ってそんなにあからさまに騒いだりはしていないが、十分気にはなっていた。
なんといっても、面食いの晶子の情報なのだ。

ガラッ。
教室のドアが開いた。Ms.石倉が来たのである。
そして、例の転校生も、である。

「彼」が1歩教室に足を踏み入れた途端、えもいわれぬ静かなどよめきが広がった。
背は高い----180は優にあるだろうか?
少し面長な顔に、どこか異国風を思わせる目鼻立ち。
やや色素の薄い髪の毛は後ろの方が若干伸ばしてある。
体つきは特に筋肉質というわけではないのだが、それでいてひよわそうな印象は与えない。

こんなに整った人も世の中にはいたんだと、岬は感心した。

「じゃ、ちょっと自己紹介してくれるかしら?」
というMs.石倉の言葉に、「彼」は
「蒼嗣克也・・・・・・」
と自分の名前だけ言ってそのあとは黙ってしまった。
Ms.石倉は「他に何か言うことはないの?」という顔をして彼---蒼嗣を見たが、もう何も語ることはないという意思を汲み取ると、「席はちょうど栃野さんの隣があいていたから、そこがいいわね」と岬の隣を指差した。
確かに、岬の隣は、ちょうど前の学期に退学したやつの席だった。まぁ、それまでもあまりそいつは学校に来ることもなかったのだが。だからMs.石倉にそう言われて初めて「あ、そうか隣は空いてたんだ」と岬は思った。そして、初めてそいつに感謝したのだった。
しかし、当然のごとく、その一瞬にして岬はクラスの女子の羨望と嫉妬の視線を受けたのだった。

席を確認すると、黙ったまま、蒼嗣は岬の隣の席に腰を下ろした。教室に入ってきてから今の今まで、蒼嗣が口を開いたのは名前を言ったときだけだった。
『あまり人と関わりたがらないタイプなのかな?』
と岬は思った。これで愛想が良かったら満点なのにな、とか勝手なことまで考えて、蒼嗣のその横顔をじっとみつめていた。

そのときだった。
ふ、と蒼嗣が岬の方を向いた。
瞳が合う。
その途端、何とも言えない切ない思いが、岬の心に突如沸きあがった。あまりの切なさに泣き出してしまいそうなほど。
胸が苦しい。
『な、何?』
苦しいのに、すごく苦しいのに蒼嗣から目を離すことができない。
瞳に映る蒼嗣の淡白な表情も、少し、動いた・・・・・・と思ったのは岬の気のせいだろうか。

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