◆ファンタジー要素の少ない1章半ばまでをショートカットするためのダイジェスト版もございます。
 * 1 章『出会い(1)』 - 『衝突(3)』ダイジェスト/  * 1 章『接近(1)』 - 『陰謀と衝撃(2)』ダイジェスト/

出会い(3)

放課後の岬たちの居場所といえばここと決まっている。
学校から歩いて5分のおしゃれな喫茶店だ。

「岬、ねぇ岬ってば!聞いてるの?」
そう圭美に言われて岬は自分が話を聞いていなかったことに気づいた。
目の前には、さっき注文した「キャラメルパフェ」が置いてあった。
さっきまではこれは来てなかったはずだが・・・・・・・・・・・・
顔にはてなマークのオンパレードの岬に、圭美がため息をつく。
「あんたが今ぼ???っと呆けてる間に来たのよ、それ。」
と、少しアイスが溶けかかっているキャラメルパフェを指差す。
「あ、そうだっけ・・・・・・??・・・・・・ゴメン。」
どうやら自分は考えに没頭していたらしい。

「な?んか今日は変だよ、岬。」
「そ、そうかな?」
今更それを否定できるわけもない。
圭美はそんな岬をじ?????っと見つめると、しばらくしてにやり、と笑って言った。
「はは??ん、分かったぞ?」
「何がよ・・・・・・?」
いきなりの圭美の意味ありげな瞳に岬が怪訝そうな顔をする。
圭美はかなり自信ありげである。
「今日からお隣の席が美男子だからってのぼせてるんでしょ!?」
「!!」
それを聞いた途端思わず岬は手にしていたスプーンを落としそうになった。
なぜって、『のぼせてる』云々のことは置いておくとして、今日転入してきた隣の男の子・・・・・・蒼嗣、のことを考えていたのは図星だったからだ。
あの時・・・・・・目が合った時の不思議な感覚。苦しくて泣きそうになるほど、叫び出したくなるほどの何かが岬の中にあった。
あの後、すぐにそれは収まったが・・・・・・その時の感覚がまだ岬の心をとらえて離さないのだ。

「やっぱりねぇ??」
圭美はまだニヤニヤしたままだ。
「ついに岬も恋をしたってわけだね・・・・・・」
「こ、恋!?・・・・・・な、何いってんの!別にあたしは・・・・・・」
妙にあせりまくる岬の行動を少々圭美は誤解したようだ。
「大丈夫だよ!別にあたしはそれを人に言いふらしたりはしないからさ!そうかぁ・・・・・・男子たちが悔しがるぞ?岬ってあんたは気づいてないみたいだけど、意外とモテてるんだよ?」
「何それ?」
初耳だ。
「あたし、岬と仲いいじゃん?だからいろいろ聞かれんのよねぇ・・・・・・あんたに恋人とか好きな人いるのか、ってね。そのたびに『いない』って答えてたのよねぇ・・・・・・今度からそう答えるの心苦しいなぁ・・・・・・」
「うそ!?いつ?誰??」
岬だって女の子だ。自分を好きだと言ってくれる人がいるなんて聞いたらそれを知りたいと思うのは当然だ。
この圭美は学校内ではちょっとした有名人だ。なにしろ目鼻立ちも整っているし色白で背がすらりとしていて、典型的な「美人」タイプなのだ。そのくせ気取ってないので、かなりの人気者なのである。岬の方はといえば、特に美人というわけではないし、背は低いし、この年にしては童顔で、いつもキレイな圭美のそばで余計に引きたて役のようになっていると思っていたというのに・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・おしえてあげな?い。だってそれはナイショだもん。」
「がく。ひどいなぁ???」
わざと大げさにうなだれてみせる岬に圭美は"まぁまぁ"というように手をひらひらさせた。
「だってそいつらがかわいそうじゃん。岬は他の男を想ってるってのに」
「いや、だから・・・・・・・・・・・・」岬は口ごもった。圭美はすでに岬が蒼嗣に恋をしていると決めてかかっている。
「それにしても」岬はごまかすように言葉をつなげた。
「あたしを好きになってくれる人なんて・・・・・・すごい奇特な人だよね・・・・・・。うれしいな・・・・・・」
それをきいて圭美は"何いってんの!"という顔をした。
「あのね、岬。あんた少し自分のこと過小評価しすぎだよ。岬はね男子の間じゃ"かわいい"って言われてるんだよ。もっと自信もちなよ!・・・・・・見る目のあるやつだったら絶対分かるよ」
「圭美・・・・・・」
圭美に言われるとそんな気もしてくるから不思議だ。こんなところが圭美のすごいとこだと岬は思う。圭美は物事をはっきり言う。そのおかげで言葉に力があるのだ。妙な説得力というか・・・・・・。そんな圭美だからこそみんなに人気があるし、岬も好きなのだ。

「でもね・・・・・・」
そこで圭美はちょっとまじめな顔になった。
「何?」
岬も動きを止めた。
「蒼嗣くんのとこでは・・・・・・もしかしたら岬とライバルになる、かもね」
少し笑いながら圭美がつぶやいた。
「・・・・・・圭美、それって・・・・・・」
「まだわかんないけどね。少しだけ、私も彼が気になるんだ」

それはまだ穏やかな午後のひとときだった。

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