* 1 章『出会い(1)』 - 『衝突(3)』ダイジェスト/ * 1 章『接近(1)』 - 『陰謀と衝撃(2)』ダイジェスト/
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白い夢(2)
--------そう、今も奈津河と竜は争っている。----もちろん昔のように表立って殺し合いなどしていない。----けれど・・・・・・裏世界では今も密かにそのようなことが行われている。現在は奈津河も竜も共に権力を持っている一族だ。表の顔は善良な大会社。しかし裏では暗殺業も厭わない。しかも、お互いに【神から授けられた力】による殺人ゆえに事件は表ざたにならない・・・・・・。
岬は呆然とした。それだけは信じられなかった。
この平和な現代にそんなことがあるなんて-------。
岬の動揺を感じ取ったのか、声の主は少しだけ間を置いた。
-------栃野岬--------
「はっ!はいっ・・・・・・」
いきなり名を呼ばれて岬は思わずかしこまる。
---------お前は信じられないかもしれないが、お前の体には奈津河の一族の血が流れている。
「えぇぇっ!?」
岬はすっとんきょうな声をあげてしまった。今まで客観的に見ていた世界が急に現実となって迫ってきた気がする。声はそんな岬の様子にかまわず言葉を続けた。
しかしお前の力はまだ目覚めていない。
けれど--------どうしても、お前には頼みたいことがある--------
「何・・・・・・を・・・・・・?」
岬は口先だけで答える。頭がこんがらがって冷静に答えられない。そう、コレは夢だ、夢なんだ、夢なら早く覚めて・・・・・・そう何度も願うが、なかなかこの世界は消えてくれない。
--------お前に・・・・・・竜一族を救ってほしい--------
「は?」
よく意味が飲み込めない。
「だって・・・・・・奈津河一族と竜一族は敵対してるんでしょ・・・・・・?・・・・・・で、あたしは奈津河の子孫で・・・・・・・・・・・・。なのに敵の竜一族を、救う・・・・・・?」
----------酷なことを言っているのは良く分かる。でも-----それはお前にしかできないこと・・・・・・。他の誰にもできない---------。
「一体・・・・・・どうすれば・・・・・・・・・・・・?」
岬はつぶやく。
いきなり「救ってくれ」と言われても、自分にできることなど考え付かない。今説明されたことだって一応聞いてはいるものの、実はよく分からないのだ。ちゃんと理解するにはこのことは難解すぎる。何しろ竜一族はおろか、自分もその血をひいているという奈津河一族さえ、どこにいるのか全く分からないのである。
岬の疑問に声が答える。
------・・・・・・・・・・・・を・・・・・・・・・・・・して・・・・・・ほし・・・・・・・・・・・・、・・・・・・はすぐそばにいる--------
しかし、なぜかここにきて急にその声は途切れ途切れになった。
「・・・・・・え??よく聞こえない-----!」
岬が聞き返したとき、岬の立っている(はずの)場所がぐらりと揺れた。
その揺れはだんだん大きくなる------!!
「さき・・・・・・。岬っ!」
次の瞬間、岬は耳元の甲高い声に思わず反射的に両手で耳をふさいだ。
その声がMAXになる。
「みさきっ、ぐーたらいつまで寝てんのよ!遅刻するよ!」
-----------姉の「港」だった。
「おねー・・・・・・ちゃん・・・・・・?」
岬は呆然としたまま聞いた。まだ頭の切り替えができない。
「何?・・・・・・あんた寝ぼけんでしょ?まーったく。正真正銘あんたの姉さんよ、あたしゃ。」
と、港はため息をもらした。
夢、か-------。
そう思ったとたん、肩の力がふっと抜けた。
"あー、そうか、そんなことあるわけないもんなー。
あたしがナントカ一族の血を引いてるとか、ナントカ一族を救う、とか。非現実的すぎるもんね。あたしってば意外にオトメちっくな女の子だったのかもね"
そう思ってふふふと笑ってみる。
しかし、なんとなく、どうしてもあの声が言ったことが頭から離れなかった。
妙に生々しく言葉の端はし、声のトーンまではっきりと今でも覚えているのだ。
「奈津河、と、竜・・・・・・・・・・・・」
そうつぶやくと、何か心の奥の方がぎゅっとしめつけられるような不思議な感覚がするのだった。
岬はぶるぶるっと身震いした。
それは何か、これから起こることへの漠然とした予兆を感じ取ったからかもしれなかった。