この記事は、以前、別のサイトで掲載していたものです。
この巻での主役は…希沙良と十九郎でしょうか?
この2人の結びつきは、本当にすごいと思います。希沙良がまだ9歳で、言いたいことをたくさん飲みこんでいたとき、おざなりの言葉じゃなく、ただ、「好きだよ」と言って救いの手を差し伸べてくれたのが十九郎。
なんと言うか…希沙良が9歳っていうことは十九郎は10歳でしょ??その時は多分、十九郎自身も何か彼なりに重いものを感じていたのかもしれない、なんて勝手に思います。少し意地悪く言うと…、十九郎は希沙良を守ることで自分の存在価値を確認していたのかもしれません。この時にはあまり深くは感じないのだけれど…。
夏江さんも「希沙良がいたから十九郎は救われている」と言っています。自分が誰かに必要とされていること、守りたい者がいること、それは強さに変換されるのだと思います。それが、よく言われる、「母親の愛情」というものなのかもしれません。それは、自分のエゴと背中合わせなのかもしれないけど…。
十九郎の愛情も、そんな一面もあるのではないでしょうか?希沙良を哀れむのではなく、それを超えたところで受け入れている、というのは亮介が言っていましたが…、これもすごいなぁ。やろうとして、すぐにできるものではないですよね。ほんと、「すごい」。この一言につきます。
この巻の中心テーマは「母親」だと私は思います。
布由江さんや夏江さんたちが重要な役割をしているところからもそう思うのですが。(そして、若木先生があとがきで、この本を自分の両親[この場合は両親ですが]に捧げる、と書いてあるし)
……母親…不思議な存在です。
希沙良はこの巻で少し救われましたね(^^)
母親の記憶がないと思っていたけれど、布由江さんの想いの断片だけでも実感することができてよかったと思います。
「幸せに、なりなさい!」という力強い言葉。その後の希沙良に多分大きな影響を与えているのでしょう。
■Favorite Scene
亮介はコートの襟元を押さえながら、忍を振り向いた。
やわかい微笑が返った。彼本来の、人懐こい笑み。
【P.170】
このシーンはすご??く好きな場面です。本当の忍様。という気がするから。…うまく言えないけど(^^;)私も亮介と一緒にホッとさせられます。
『おまえは私であって私ではない
おまえはおまえひとりであっておまえひとりではない
(中略)
『誰よりも 幸せになりなさい!』
【P.209】
これはもう、この巻で一番の感動シーンですね!
これ以上の愛の言葉があるか!…っていうぐらいの最大の母の言葉。
希沙良は良い言葉をもらいましたね。
そういう意味では皓に感謝(?)